Dance in the rain
一歩、そこに足を踏み入れて。
あたしは立ちすくんだ。
「ここ……」
そこは、オンボロプレハブ倉庫。じゃなかった。
白くピカピカに磨きあげられた床と、黒く塗られた太い鉄骨が渡る天井。
広々としたモノクロの空間には、
照明関係らしき、ゴツイ機械がいくつも置かれていて。
エノキ男子と同じような、黒Tシャツとジーンズ姿の人たちが何人も、
せわしなく行きかってる。
奥の壁には、大きな白いペーパーが天井から垂れ下がっていて、
その前に立っているのは……スーツ姿の翔也だ。
スタッフらしき女性に、襟元を直してもらってる。
「じゃ、も1回行こうか」
カメラを構えた長髪の男の人が叫ぶと、女性が翔也から離れていく。
カシャッ
カシャッ
シャッター音が響く。
そのたび、翔也の表情が、ポーズが、くるくる変わっていく。
一瞬で切り替わる、喜怒哀楽。
こんな顔できるんだ、ってびっくりするくらい、鮮やかな変化だった。