Dance in the rain
「右のライト、も少し寄せて」
「椅子持ってきて。翔也、座ってみようか」
カメラマンの指示が飛び、光と闇が交叉する。
それは、
まるでイリュージョンのように瞬く、近未来的な空間——
「撮影スタジオにくるのは初めて?」
日下さんの言葉に、あたしは頷いた。
「翔也って……モデルだったんですね」ってつぶやくと、
日下さん、ギョッてのけぞった。
「え、もしかして知らなかったの!?」
それから、こっそり声をひそめて、「同棲してるんでしょ?」ってささやく。
「いいえっあたしたちはそのっ……」
説明しようとしたあたしを、観音菩薩様みたいな福々しい笑みで遮る。
「大丈夫大丈夫。リークしたりなんてしないから」
「えっと……翔也ってそんな有名人なんですか?」
ちょっとビクビクしながら聞くと、日下さんは首を振った。
「有名人、っていうのはちょっと違うかなあ。使いたいって声はよく聞くけど、本人があんまり大きな仕事、したがらないらしいよ。いつも女性誌で読者モデルの相手役とか、そんなのばっかりで」
そう言ってから、「あ、申し遅れました」って、あたしに向き直る。
「株式会社YKD、営業部の日下秀則(くさかひでのり)と申します」
そう言って、名刺をくれた。