Dance in the rain
「でも、なんで?」
「相手役のモデルが、急病で来られなくなったんだよ。だから、お前が代役」
「……代役」
「そう」
「……って、あたしっ!?」
「だから、そうだっつってるだろ」
「むむむむ……無理無理無理無理っ!」
最近はスキンケアもサボってるし!
いや、そうじゃなくて、そもそも撮影とか、耐えられるような顔してないしっ!
必死で首を振りまくるあたしの耳に、くくくって楽しそうな笑い声が聞こえた。
「翔也、ちゃんと説明してあげないと彼女、困っちゃうだろ」
長い髪を後ろで一つにまとめ、野性的な空気をまとったその人は、さっきまでカメラを構えていた人だった。
「花梨ちゃん、だよね。初めまして。カメラマンの矢倉です」
「あ……どうも」
「花梨ちゃんは、Sarie(サリエ)ってブランド、知ってるかな?」
「あ、はい……名前だけは」
たしか、シンガポールの時計ブランドじゃなかったっけ。
「今撮ってるのは、サリエのメンズウォッチの広告用スチールでね。時計をつけた翔也と君との絡みを撮影したいんだよ」