Dance in the rain

しょ、翔也との絡み、って……!
ななな何それっ!

ずりっと後ずさるあたしに安心させるように矢倉さんは微笑む。
「大丈夫。メインは翔也で、写るのは君の背中だけだから」

え……背中、だけ?

あたしはホッと肩の力をぬいた。
それなら……まぁなんとか……。

「そういうこと。ってわけで、とっとと着替えろ」
横から口をはさんだ翔也に引きずられて、スタジオの隣、小さなメイクルームに強引に連れ込まれてしまった。


「ごちゃごちゃ言ってる時間はねえんだよ。もうだいぶ押してるんだから」
ハンガーラックにズラッと並んだ衣装の中から、
翔也は真っ赤なドレスを選ぶと、あたしの腕に押し付けた。

「ちょ……と、あたしまだやるなんて一言もっ……」

「なんだと?」って、眉を上げた翔也は。
次の瞬間、ぞくりとするほど、蠱惑的な微笑みを浮かべた。
「あぁそうか、脱がせてほしいのか。だったら早くそう言え」

その眼差しが、一気に昨夜の記憶を呼び覚ましてしまう。
やるせないほど甘やかな、あの……


「いいいいいっ! 結構です! 自分で着替えますっ!」

叫んで、あたしは翔也を部屋から押し出した。
バタンって閉めたドアの向こう、翔也が爆笑していた。
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