Dance in the rain
「なぁんだ、そうなの!? じゃあぴったりじゃないか! 雨降って地固まる、とはまさにこのことだねっ」
「待ってくださいっあたし……っ!」
「じゃ、さっそく準備してくるから、花梨ちゃんはメイクルームで待っててね」
一方的にまくしたてて、日下さんが離れていく。
「翔也っ困るよ、あたしはもうっ……!」
取り乱しながら見上げるあたしの頭を、翔也はあやすようにくしゃっと撫でた。
「お前言ってただろ、『踊りたいって思える日がくればいい』って」
「そりゃ……言った、けど……」
翔也の頬が、ふわっと優しく綻んだ。
「リハビリだって、軽く考えればいい」
リハビリ……?
また踊れるようになるための?
かすかに、確かに、心が動いた。
踊れるんだろうか……。
できるのかな、あたしに。
「花梨ちゃん、ヘアメイクの坪井里香でーす! よろしくね!」
気が付くと、背の低いかわいらしい女性が立っていて。
彼女に引っ張られるようにして、あたしは再びメイクルームに入っていった。