Dance in the rain

際限なく落ち込みそうになる気分を紛らわせようと、
あたしは別のことに意識を集中させた。

「St.プロモーションって……」
そういえば、どこかで聞いたことあるかも……。

「知ってるかしら? 芸能プロダクションなんだけど」

げ、げーのープロダクション?

「翔也は、うちのモデルなのよ」
言われて。
あたしはようやく、すべて飲み込めたような気がした。

つまりこの人は、翔也の所属事務所の社長さんで。
きっとあたしに、翔也はうちの金の卵なんだから近づくな、とか。
そういうことを言いに来たんじゃないかな。

じゃあ……この人は、翔也の恋人じゃ……ないかも?
たった一筋の光に、こんなにもホッとしてる自分にびっくりした。

そして、次の言葉を待ち受けた。
別れろ。か、部屋から出ていけ。か。
いずれにせよ、気持ちのいい言葉ではないだろうけど。

……でも。あたしの予想は外れた。


「あなたには、感謝してるわ」


——は?
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