Dance in the rain
——……彼と初めて会ったのは、私がまだ父の会社を継ぐ前、モデルをしていた頃よ。
——知り合いに頼まれて、卒業制作発表のファッションショーで、彼の作った服を着て、歩いたの。
——その作品を見た時……息が止まったわ。それまでもいろんなデザイナーと仕事をしてきたけれど、彼は別格だと思ったの。
——誰にも媚びない、尖ったセンス。それでいて、決して失われない着る人への愛情。その絶妙なバランス感覚。
——閃きの中の煌めき。それを現実のものにするだけのテクニック。
彼はすべてに恵まれていた。
——彼なら、世界を舞台に業界のトップで活躍できる、そんなデザイナーになれるって。予感がしたのよ。
——だから……ミーハーなファン心理のようなものかもしれないわ。私は単純に、見たいのよ。もう一度、彼の作った服を。