Dance in the rain
あたしの乱れまくった呼吸だけが、静かな夜の空気を振動させる。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
くすって。
小さく翔也の唇から笑いが漏れた。
「盗作されて……うらやましいとか言われたの、初めてだな」
翔也の手が伸びて。
ふわふわって、あたしの髪の毛を弄ぶ。
「どうすんだよ、もしまた盗作されたら」
あたしはギュッて、翔也を睨んだ。
「また描けばいいっ! 才能は、翔也の中にあるんだよ。札束やダイヤの指輪じゃあるまいし、盗られたら消えちゃうってわけじゃないんだから」
翔也の手が、ぴくりと止まって……ギュッと握りしめられた。
「モデルやってたのだって、ファッションの世界と関わっていたかったからじゃないの? まだ好きなんでしょ? 忘れられないんでしょ? だったら、描けばいいじゃない。何度盗まれたって、何度否定されたって。描き続ければいいじゃない」
翔也の視線が、あたしを捕える。
揺れていたそこに、確かに、強い光が加わっていて。
その片頬が上がって、不敵な笑みを作った。
「ほんと、変な女……。お前みたいなヤツ、初めてだ」