Dance in the rain
2階の角部屋。
玄関を入ってすぐ、右側のドアを開けて。
「家具も一応あるから、不自由はねえだろ」
って、あたしのスーツケースを運び込んでくれた彼の後ろから、中に入る。
そこは6畳くらいの洋室で、ベッドと机、椅子、本棚がそろってた。
「バスルームは廊下挟んで向かい側。中にあるタオル類、好きに使っていいから。先にシャワー浴びれば」
「う、うん……ありがと」
シャワーって言葉に、ぎくって反応してしちゃった。
のこのこついてきちゃったけど……
だだ大丈夫、だよね?
一応、あたしも女子だし……ここは心配しとくべき?
「あのっ……」
「ん?」
「あたし、まだあなたの名前聞いてなかったよね?」
今更だけど、あたし、名前も知らないヤツの家に転がり込んでるんだよね。
なんて、愕然としながら聞く。
「あぁ……翔也」
返ってきたのは短い一言。
「それ、だけ?」
フルネーム、教えてくれないの?
なんとなくひっかかって聞き返すと。
「なんだよ、それだけって。お前、オレのこと知りたいの? 興味あるわけ?」
わずかに視線がきつくなって、あたしを睨む。