Dance in the rain
「すみませーん、コーヒーまだですか?」
手を上げているお客さんを見つけて、あたしは意識をフロアに戻した。
「あ、はいっ今すぐお持ちします!」
◇◇◇◇
にぎやかなおしゃべりが飛び交っていた店内も、ようやく静けさに包まれた夜8時過ぎ。
「きゃあっから揚げだっ!」
から揚げ、きのこと水菜のサラダ、玄米ご飯とお味噌汁。
マスターがカウンターに用意してくれた料理を見て、あたしはガッツポーズした。
ランチ後と閉店後。1日2回も豪華なまかないを食べられて。
体重計を視界から遠ざける日々が続いてるけど。
いいのいいの。
『10グラムの体重増が、パフォーマンスにどれほどの影響を及ぼすか』なんて、熱弁をふるう先生も、もういないしね。
「今日もがんばったね、花梨ちゃん」
「はい、足がパンパンです」
労わるように微笑む純さんの隣に座り、「いただきまーっす!」って、手を合わせた。
ちりちりん——