Dance in the rain

「お、から揚げじゃん」
あたしのお皿を覗き込んだ翔也は、悪戯っぽい光を煌めかせたその目で、あたしを見た。

「猫は脂っぽいもん食っちゃダメなんだぞ」
そしてひょいっとから揚げを奪い……口の中へ。

「ああっ! ちょっと翔也何すんの!? あたしのから揚げっっ」
「お前最近太っただろ。セーブしとかねえと、マジでドラえもんになるぞ」

う。
ひ、人が気にしてることをっ!

前言撤回っ! 
全然、ひとかけらも優しくないっ!!

「こら、翔也。女性にそういうこと言うもんじゃないよ。ったく、デリカシーなさすぎ」
右隣の純さんが、あたし越し、翔也の頭をぺんって叩く。
「花梨ちゃんはもともと痩せすぎなんだから。太るくらいでちょうどいいんだよ」

「ほら、まだあるからね、花梨ちゃん」
マスターが、あたしのお皿に大きなから揚げをどんって乗せてくれて。

「マスターも純さんも優しいなあっ。翔也もお2人を見習いなさいよ」
思いっきり翔也にあっかんべーって舌出してやった。
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