Dance in the rain

「ちょっ……もぉっ猫じゃないからっ! やーめーてーってば!」
追いかけてくる翔也の手から逃げるあたしを見ながら、マスターが笑う。
「2人って、仲いいねえ」

「ほんとほんと。最初、翔也が女の子と同居って聞いた時は、どこの組織に売り飛ばすつもりなんだろうってハラハラしちゃったけど」
「じ、純さん、笑いながらそういう冗談言うの、やめてください……」

「ま、散々太らせてから売り飛ばす、ってのもアリだよな」
「はあっ!? そうなの!?」
「まあ、あんなお子様スタイルじゃ、買い手つかねえだろうけど」
「なっ……なっっ!! 翔也のばかっ!!」

こぶしを握ってふるふる震えるあたしを見て、
純さんとマスターは大笑い。
「こんなに気が合ってるんだから、付き合っちゃえばいいのに」

「ありえねえだろ」
「ありませんっ!」

声をそろえたあたしたちに、また純さんたちが爆笑する。

うう。
なんか絶対、誤解されてる。あたしたち。

「翔也みたいな性悪なオレ様野郎と付き合ったら、絶対苦労しそう。あたしは、純さんみたいなやさしーい人の方がいいなぁ」

「おいおい、純に惚れても無駄だぞ。女いるんだから」
翔也の言葉に、あたしは「え」って声をあげた。
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