Dance in the rain
「あのさ……飲んでも、いい?」
「素面じゃ話せないって?」
いや、ただ恥ずかしいだけなんだけど……。
「いいぜ。いくらでも」
翔也はわざわざ自分で冷蔵庫から缶ビールを2本出してきてくれて。
1本をあたしにくれた。
プルタブを開けて。ぐびぐびって飲む。
冷えた液体が喉の奥に落ちていくのを感じながら、あたしは言葉を選んだ。
「ずっとダンスばっかりやってたから、そのぅ……はっきりいって、全然恋とかしてなくて……。まぁ恋愛経験っていっても、片想い、くらいで」
全部言わないとダメかな?
ちらっと隣を伺うと、
「いいぜ、片想いの話でも。どんなヤツ?」
って平然と聞いてきた。
これは話さないと解放してもらえなさそう……。
「えっと……バンクーバーにいた頃……」
窓に目をやると、ガラスに水滴の跡がついていた。
また雨が降り出したらしい。
バンクーバーも、雨が多かった。
冬は特に。
こんな風な霧雨がシトシト、何週間も降り続いた。
「あたし、ダウンタウンのスタバでバイトしててね。そのお店に、ほぼ毎日、同じような時間に通ってくる日本人がいたの」