Dance in the rain
7. 送り梅雨①
「ええっフジョシって、そういう意味なんですか!?」

「そっか、花梨ちゃん海外長いから、知らなかったんだね?」


赤くなるくらい一生懸命顔こすって洗って、でもなかなか落ちなくて。
そうこうしてたらすぐに時間が過ぎて、思いっきり遅刻しちゃって。

ランチのピークが過ぎた昼下がり、お客が途切れたのを見計らって、
言いわけついでに、昨夜の出来事を2人にぶちまけたの。
もちろん、キスの部分はカットして。

そしてようやくあたしは、どうしてあんなに翔也がウケてたのか、理解した。
婦女子、じゃなくて、腐女子っていう新語だったのね。
男同士の恋愛に萌える乙女、って意味らしい。

「……あたし、バリバリフジョシですとか言っちゃった……」

純さんもマスターも、笑いを必死でこらえてる。
あたしは頭を抱えてカウンターに突っ伏した。

何を宣言しちゃってるんだ、あたしは。
日本語って、難しい……。


「まぁまぁ、今日のまかないは、花梨ちゃんの好きなから揚げにしてあげるから。元気だしなって」
「マスター……顔が笑ってますけど」
「いや、もともとこういう顔だからね」
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