鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
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「…う…ん…」


ガチャガチャと言う音で目が覚めた。

程よい温もりと、柑橘系のいい香りに包まれてもっと寝たいと目を閉じる。

…寝たい?って何だ?
閉じた瞼をパチリと開ける。



「起きたか。」


何と目覚めたのは社長の腕の中。
いわゆるお姫様抱っこをされていて、自宅マンションのドアの前で社長が鍵を開けようとしているではないか。

一気に意識が覚醒して、次の瞬間羞恥心が込み上げる。


「しゃ、社長!すいません、わたし、寝ちゃって…??」


ガチャリ、器用に開けられた鍵を下駄箱の上に置いて、降ろされるわけでもなく私を抱きかかえたまま廊下を歩く社長。


「寝室は?」

「寝室も何も部屋一個しかないんで…」


いや、そんな会話したいんじゃないんだけど…。
部屋に入りベッドを見つけると、やっとおろしてもらえた。やけにそっと。


「あの、ご迷惑おかけしてすみません…」


社長の運転する横で爆睡して、さらには社長に担がれて送り届けられる秘書なんて私以外に多分いない。

本当にこんな秘書でいいんだろうか?



「ワインがダメだったか?気づかなくて悪かったな。明日は午前のアポもないし午後からでいいぞ。」


そう言うと、ぽんぽん、と私の頭を撫で部屋を出て行った。

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