溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
『こないだ、いくら残ってるとか確かめずに、下ろしたよ俺。五万何千円か』
「ご、ごまん……でも暗証番号とか、教えたことなかったよね?」
『ああ。まれのことだから俺に関する数字だろうなーと思ったら、その通りだったからびっくりした。すぐばれるから変えた方がいいよアレ』
くすくす笑う理一に対し、自分の温度がさーっと冷めてくのを感じる。
暗証番号がわかったからって、勝手に下ろすのは、いくら恋人同士とはいえやっちゃいけないことじゃない……?
『でもそっかー、それ下ろしたら終わりだったんだ。夜の仕事も始めたわりには、まれってお金ないんだね。ないものは仕方ないけど、残念』
理一の気の抜けたような声に、無性に苛立った。
……残念のひとことで済ませる問題ですか? コレ。
私は、あなたのために昼も夜も一生懸命働いてるよ。たぶん、普通に生活していれば、貯金だってできる程度のお金はもらっている。
なのになんで、お金がないかって……その理由、本当にわからないの?
いつでも自由で、縛られることが嫌いで、夢に向かっている理一。
私は純粋に彼の夢を応援したくて、青森からはるばる上京した。
彼と一緒なら、貧しくてもきらきら眩しい毎日が送れる気がしていたから――。