溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
でも、いつになっても夢が叶う気配はない。
バンドの練習だと出かけていく理一が、どこで何をしているかも知らない。
それでも信じなきゃって、ずっと言い聞かせてた。
音楽でプロになるなんて並大抵のことじゃないけれど、理一ならいつかきっと夢を叶えるって。
だから、失礼発言ばかりの甲斐にも、食って掛かった。
今だって、本当は信じたいよ……でも。
「……あのさ。今日私、仕事途中で抜けてきたんだ。戻っても、平気?」
感情的にならないよう、静かな声で尋ねる。
『ああ、うん。そだね。まれにはもっと稼いでもらわないといけないし』
まだお金の話を続けるか。どこまでも図々しい理一の発言に、脱力してしまう。
私はATMかっ! そう突っ込む元気はなかった。
「じゃあね。……また」
『うん。行ってらっしゃい』
電話を切った私は、コンビニの前にしゃがみ込む。
仕事、といってもさっきクビになったばかりだ。家には帰れないし、帰りたくもない。
東京で唯一頼れる人物と言ったら美鈴さんくらいだけど、まだ仕事中だろうし……。