溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
『はい』
甲斐は三コールほどで電話に出た。繋がったはいいものの、何て言えばいいんだろう……。
さっきまではペット発言の責任取ってもらう気満々だったけど、今日初めて会った相手にそんな図々しいお願いをするなんて、やっぱり現実的じゃない気がする。
『……稀華?』
「す、すいません。なんでもありません!」
向こうの反応を待たずに、私は電話を切った。でも、即座にスマホが音を立て、甲斐からの着信を知らせる。
うう、自分から掛けたわけだから、無視するわけにもいかないよね……。
「……もしもし」
『お前な、一方的に切るなよ。何でもないならそれでもいいが、その捨てられた犬みたいな声聴く限り、なんかあったんだろ?』
……何コイツ。電話だと優しい。私の声なんて大して聞いたことないくせに、元気がないってわかるのかな。
まあ、今は自分がズタボロだから、ただそう聞こえるだけかもしれないけど。
「家に……帰りたくなくて」
ぽつりと本音をこぼすと、甲斐は間髪入れずにこう言った。
『わかった、迎えに行く。今どこだ?』