もう泣いてもいいよね
子供の頃と言えば、よくタケル、そして香澄と遊んでいた。


大和武尊(やまと たける)。

今思えば、すごい名前だったんだ。


あの頃はそんなこと知らなかった。

タケルは「すごい人と同じ名前だぞ」と自慢げだったのは覚えている。


家が近くて、年が近いのはタケルと香澄だけだった。

3人で、歩いて1時間かかる小学校に通った。


美平(うつくしだいら)小学校。

うちから一番近い小学校だったけど、それでも全校生徒100人はいなかった。

たまに、タケルのじっちゃんが軽トラックに乗せて送ってくれた。


タケルはじっちゃんと二人で暮らしていた。

後から聞いた話だと、小さい頃に両親が離婚して母親が引き取り、実家に帰ってきたらしい。

その母親もタケルが小学校に上がる前に亡くなった。

その後は母親のお父さんである、じっちゃんが面倒を見ていた。

父親は既に再婚していたらしい。


タケルはそんな環境を寂しがったり、愚痴を言ったことはない。

じっちゃんが、「タケルはこの世で一番強い神様と同じ名前だぞ」と、いつも言っていたからだ。

タケルが「オトコが泣くもんか」と言って泣くのを我慢しているのをよく見かけたものだ。

それから、「オトコはオンナを守るもんだ」とも言っていた。

誰だ?そんなこと教えたのは?


でも、「皆美、おまえを絶対守るからな」と言われた時は、すごく嬉しかったのは覚えている。


「約束だよ?」

「おう!」

そして私とタケルは「指切りげんまん、ウソついたら、針飲ます♪」と、指切りをした。
 
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