もう泣いてもいいよね
「ここだよ」

タケルが上を見て言った。

「ほんとだぁ~」

「うわぁ~、結構大きいね~」

13年も経ってるので、周りに枝が生い茂りすぐには気付かなかったが、そのツリーハウスは思ったよりも大きかった。

その木はあの頃感じたよりも小さく見えた。

子供の頃の記憶だ。

私がそれだけ大きくなったということだろう。



木の周りに螺旋状に小さな階段が作られていた。

「登っていい?」

「どうぞ」

私は一番に登らせてもらった。

私の次に香澄が、そして、最後に二人を見守るようにタケルが登ってきた。

地面から5mくらいの高さだろうか?

ツリーハウスに登ると、入り口は木の板のドアだった。

それを開けて中に入ると3畳くらいの広さはあった。

天井はそれほど高くないが、しゃがむほどではない。

窓が壁にそれぞれ1つずつ作られていた。

板を上に持ち上げて、木の棒で支える簡易窓だ。

全部の窓を開けた。

気持ちがいい風が入ってきた。

眺めも木の枝を通して意外と見えた。


村の一部が見える。

あの時、見たいと思って見られなかった景色だ。

やっぱり景色が良かったんだ。

景色が良さそうな気がしてたんだ。


床は木の葉が少し入っていて、埃が積もっていたが、部屋の中に竹箒が置いてあったので、それで全部はき出した。

窓に寄りかかって景色を眺めた。

「どうだ?」

「うん、すごいね。最高だよ」

「そっか」

「これ、じっちゃんとタケルが作ったの?」

「うん、3ヶ月くらいかかったんだ」

「そうだったんだ」


ここまで1時間はかかる。

これだけの材料を運び、木の上まで持ち上げて作るのに、どれだけの労力を使っただろう。

二人の苦労を考えると申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 
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