もう泣いてもいいよね
「ごめんね」

私はタケルの方を向いて言った。

「何がよ?」

タケルは私の横から外を眺めていた。

「だって、私がこの木から落ちたから作ってくれたんでしょ?この景色を安全に見せるために」

「いや…まあ」

タケルが少し照れた。

「それなのに、ここに来られなくて、ごめん」

「いいよ。あの時は皆美のおじちゃんのことで、それどころじゃなかっただろ」

「じっちゃんにもお礼を言いたかったな…」

「そうだな」

タケルは少し寂しそうな顔になった。

二人でちょっとしんみりした感じになってしまった。

その時、香澄が後ろから私に覆い被さり、頭の上にあごをのせてきた。

「疲れた~」

「どうしたの?」

私は窓にのせた自分の腕と香澄の頭に挟まれながら聞いた。

「階段のとこ滑って危ないから掃除してきた~」

「あ、ごめんごめん」

「いやいや」

香澄に乗られて重かったが、それでも気持ちよかった。

人と触れ合うのはやっぱりいいな。

いつの間にか笑顔になった私と香澄を見て、タケルも笑顔を取り戻していた。
 
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