もう泣いてもいいよね
目の前に広がる村の灯りがきれいだった。
それ以外の灯りは、かなり離れていて、人里離れた場所だと言うことがわかる。
ここまで来るのは本当に険しい道だった。
あの頃、タケルがこんな場所まで来ていたことに驚きを感じた。
「タケル、ここから落ちたの?」
「…ああ」
「よく助かったね…」
「ほら、ちょっと顔を覗かせて見ろよ。少し広い出っ張りがあるだろ?」
私はちょっと立ち上がってのぞき込んだ。
「あ、本当だ。あそこで止まったの?」
「うん。じゃないと、死んでるって」
確かに、その先は何もない岩壁なのだ。
「ほんと、ごめん」
私はまた座り込んで言った。
「おまえのせいじゃないって」
「でも…」
「今、おれはここにいる。それでいいじゃないか」
香澄は横で、子守花を無表情で見ながら私たちの会話を聞いていた。
満月に少し雲がかかり、辺りが一瞬暗くなった。
しばらくするとその雲も流れていき、また明るさを取り戻した。
「皆美」
香澄が下を見たまま言った。
その視線の方を見ると、子守花が一つ花を咲かせようとしていた。
「あ…」
私たちは黙ってそれを見ていた。
その花は見ているとわからないが、だんだん開いているのは確かだった。
「白いね…」
「うん」
私のつぶやきに香澄が答えた。
花びらはふっくらしているが、先は細く伸びている。
光っているようにも見える花びらが神秘的だった。
気が付くと、他の花も開き始めていた。
「すごい…」
「皆美、さっきのはもう開ききったみたいだ」
「ほんとだ」
最初の一輪は完全に開いていた。
「満月の光で咲く子守花かあ…すごいね…私、本当に見られたんだ」
「そうだね」
香澄が横で微笑んだ。
タケルもほっとしたようだ。
「一輪、持って帰っていいかな?」
私は二人の顔色をうかがった。
二人がこの花について何か知っているのは確かだった。
「いいのかな?」
タケルが香澄に聞いた。
「いいけど、朝には枯れるよ?」
それ以外の灯りは、かなり離れていて、人里離れた場所だと言うことがわかる。
ここまで来るのは本当に険しい道だった。
あの頃、タケルがこんな場所まで来ていたことに驚きを感じた。
「タケル、ここから落ちたの?」
「…ああ」
「よく助かったね…」
「ほら、ちょっと顔を覗かせて見ろよ。少し広い出っ張りがあるだろ?」
私はちょっと立ち上がってのぞき込んだ。
「あ、本当だ。あそこで止まったの?」
「うん。じゃないと、死んでるって」
確かに、その先は何もない岩壁なのだ。
「ほんと、ごめん」
私はまた座り込んで言った。
「おまえのせいじゃないって」
「でも…」
「今、おれはここにいる。それでいいじゃないか」
香澄は横で、子守花を無表情で見ながら私たちの会話を聞いていた。
満月に少し雲がかかり、辺りが一瞬暗くなった。
しばらくするとその雲も流れていき、また明るさを取り戻した。
「皆美」
香澄が下を見たまま言った。
その視線の方を見ると、子守花が一つ花を咲かせようとしていた。
「あ…」
私たちは黙ってそれを見ていた。
その花は見ているとわからないが、だんだん開いているのは確かだった。
「白いね…」
「うん」
私のつぶやきに香澄が答えた。
花びらはふっくらしているが、先は細く伸びている。
光っているようにも見える花びらが神秘的だった。
気が付くと、他の花も開き始めていた。
「すごい…」
「皆美、さっきのはもう開ききったみたいだ」
「ほんとだ」
最初の一輪は完全に開いていた。
「満月の光で咲く子守花かあ…すごいね…私、本当に見られたんだ」
「そうだね」
香澄が横で微笑んだ。
タケルもほっとしたようだ。
「一輪、持って帰っていいかな?」
私は二人の顔色をうかがった。
二人がこの花について何か知っているのは確かだった。
「いいのかな?」
タケルが香澄に聞いた。
「いいけど、朝には枯れるよ?」