嘘つきな恋人
マンションの入り口の扉の前で待っていた三島さんは濃いオリーブ色のチノパンに白いサマーセーターに、麻のグレーのジャケット。
いつもは細身のスーツ姿をしかほとんど見ていないけど、
カジュアルでオシャレな印象。オトナの着こなし。かもしれない。

ネックレスとか指輪とか付けていなくてホッとする。

あんまりオシャレすぎる男の人は苦手だ。


私の姿を見て、
三島さんは目を細め、
「可愛い。そういうのもたまにはお願いしたい。」
とにっこり微笑んで、私の手を取り、

マンションの前に停めてあった
よく見るエンブレムの紺色の外車の助手席に乗せた。

革張りの滑らかなシート。薄いミントの香り。
低く流れる音楽はボサノバだろうか
高級な車だね。

「三島さんってお金持ち?
マンションも凄く贅沢な場所にある。」

「そうかな?
…でも、マンションは持ち主が知り合いで、安く借りてるし、
車は…趣味かな。
少し、エンジンが大きい、スポーツタイプなんだよ。
彼女も3年もいないし、他に使うところがない。」

と笑って、低いエンジン音を響かせ、車を発進させた。

マンションの持ち主が知り合いなら
…安く借りられるんだねえ。
なるほど。と思いながら私は乗り心地のいいシートに寄りかかった。
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