嘘つきな恋人
平日の映画館は空いていてのんびりしている。
冷房が少し強いかな。
ひざ掛けは借りられたけど、半袖のワンピースで少し寒かったと思うと、
三島さんがジャケットをかけてくれた。
私が顔を見上げると、

「映画館にはあんまり来ないって言ってたから、
女性には少し寒いって知らないだろうなって、
ジャケット持ってきた。これはリン用。」と微笑む。

私用にわざわざジャケットを着てくる男なんて初めてだ。

気が利きすぎると
誰にでもそうしているのかと
少し思う私はちょっとひねくれているかな。

私はチョット反省して息をつく。

「うん?どうした?」

「三島さんっていつも優しいんだなって。」

「好きになった?」

「…私以外の女の人にもそうなのかなって…。」

「げー。そっち?
俺は下心があるオンナにしか優しくしない。
気が利きすぎると、自分に気があるのかって誤解されると面倒だから…」

そう。
気の利く男もなかなか大変なんだね。と顔を見ると、

「リンは特別。安心して。」

と手を握られると、ドキドキする。

三島さんはくつろいで、買ったコーヒーを反対の手を使って飲んでいる。

なんだかこういう場面にも慣れているような気がして、

私は俯いて、映画が始まるのをジッと待っていた。
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