【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「……今更なんですけど、」
「ん?」
「個室とか入られたら、追えませんよねアレ」
ほどよい距離を保って、ふたりを追う。
いまのところは街の方へ歩いてるだけみたいだけど、当然個室に入られたら追えない。まあ個室って言っても、カラオケとか飲食店の個室とか、諸々限定はされるけど。
「そうだねえ。
でも向かってんのショッピングモールじゃね?」
「ああ……」
たしかに向かっているのはそっち方面。
そして本当に行き先はショッピングモールだったようで、ふたりはそこに入っていく。……それにしても、南々先輩楽しそうだな。
「……南々先輩があんなふうに笑ってるところ、
あんまり見たことないですよね」
「ん? ああ……たしかにねえ。
一緒にいる時間の差じゃねえの?」
楽しげに話しているから、俺らの尾行に気づく様子もない。
それを見つめていたら、不意に。
「……結構あのコ、肉食っぽいな~」
彼が、南々先輩の手を握った。
その拍子に彼女は顔を上げて何か口にしたけど、繋がれる手が離れることはないまま。ふたりの向かった先は。
「……どうするんですか、椛先輩。
あれ完全に向かってるの映画ですよ」
モール内にある映画館。
わざわざ昼集合だったのはそのためか。