【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「……そうか」
「はい。はやく花火しましょう?」
砂浜をさくさくと進んで、広げたバラエティパックからそれぞれ花火を取る。
火を点ければ、弾けるように鮮やかな花火が夜に映える。火薬の匂いに、なんだか懐かしくなった。
「嬉しそうな顔してんな」
「ふふっ、うん」
それでも、溢れる笑みは懐かしさと同時に淡い思いを孕む。
王学に入った時は、ほぼ強制的にロイヤル部に入れられて、訳がわからなかったけれど。
今の時期はブレザーを着用しないからとネクタイにとめているピンクゴールドの『R』を刻印した王冠バッジが、愛しく感じる。
歴代の生徒会で、わたしだけの色。
「やっと2ヶ月……」
「ん?」
「わたしがロイヤル部に入って、やっと2ヶ月なんです。
……もっと長く一緒にいるような気がするのに」
まだ2ヶ月しか経っていないなんて、それだけこの2ヶ月間は濃密に過ごしてきたということだ。
いずれ別れが来るとわかっていても。……いまはまだ、この状況に甘えていたい。
「……南々瀬」
「はい」
「……ちゃんとそばにいろよ」