【完】こちら王宮学園ロイヤル部
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「ななせ、おいで」
ベッドの中から届くのは、やわらかくて甘い綿あめみたいな声。
花火をしたあと各自部屋でお風呂に入って、ふたたび下のダイニングに集合。冷やしてあったたくさんのフルーツを椛が切り分けてくれたから、それを食べながらみんなでトランプをして。
「……、うん」
日常生活の中で主に遊ぶトランプゲームはほとんど制覇したんじゃないか、という頃には、時刻は12時を過ぎていた。
そのまま遊んでもよかったのだけれど、莉央が「ねみー」って言い出したから、解散した。
わたしとルアの部屋は、2階の端。
部屋に入って窓からぼんやりと外を眺めていたら、先にベッドに入ったらしいルアに呼ばれた。
「……エアコン、さむくない?」
どちらかといえば普段はわたしのところにルアが甘えに来るから、「おいで」と言われると一瞬ドキッとしてしまう。
振り返ってベッドに身を滑り込ませると、ルアが優しく尋ねてくれた。
「平気。ありがとう」
布団をかけてくれたルアが一度ベッドを出て、3つついていた明かりのふたつを消す。
それからベッドサイドのライトは明かりを小さく絞って、ふたたびわたしの隣に横になった。
かと思うと、ぎゅっと抱きしめてくるから。
一瞬びっくりしていたら、「やっぱりこっちのほうが、おちつくね」らしい。
これがもし別の誰かだったらびっくりするし、ドキドキするかもしれないけど。
猫みたいなルアに、わたしも安心する。
「……おやすみ、ルア」
「うん。おやすみ、ななせ」
体温を寄せ合ったまま、目を閉じる。
ルアから香ってくるシャンプーの香りが自分の髪からも漂うことに気づいてなんだかくすぐったくなりながら、ゆっくりと意識を手放した。