【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「ん、」
ピク、と指先が揺れる。
それからまぶたを持ち上げれば、目の前にあるのはいつもより幼いルアの綺麗な顔。目を閉じていたらルノとよく似ているな、と思いながら。
「………」
手を伸ばした先で、触れたスマホ。
時刻を見れば3時過ぎで、どうやら真夜中に目を覚ましてしまったらしい。
ちらっとルアの方を見てみれば、半透明な膜越しに見てるみたいに、月光が幻想的な美しさを彼に与えていて。
さすが王子様、と声には出さずに小さく笑う。
「ななせ……?」
そっと身体を起こしたのだけれど、彼は気づいてしまったらしい。
いつもよりも甘い口調でわたしの名前を呼ぶ彼の髪を、あやすように撫でる。そして。
「喉渇いたから、水、飲んでくるわね」
「、うん……」
言えばルアは「ひとりでいける……?」と眠そうな瞳でわたしに尋ねる。
「大丈夫。ルアは寝てて」と答えてスリッパに足を入れて部屋を出ると、誰かがつけておいてくれたのか、広い廊下には電気が灯されていた。
本当に水が飲みたかったわけじゃないんだけど。
なんとなくそういう気分になったから、静かな別荘の中を歩いてリビングに向かう。
「あれ、」
電気がついてる。
ってことは、解散したあとに誰か戻ってきて起きてるんだろうか。
それとも消し忘れ……?
いやでも、部屋を出る時に夕帆先輩が消してたのを覚えてるし。誰かが同じように起きてきたのかも、と、静かにリビングの扉を開いてみれば。