【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「……どうした?」



「……いつみ先輩だったんですか」



ソファに優雅に腰掛けているいつみ先輩の姿。

テーブルにはノートパソコン、手にはA4サイズのファイル。どう見たって生徒会の仕事であるそれを、一瞬じっと凝視する。



「……持ってきたんですか?仕事」



彼の荷物は最低限だって言ってたし、実際軽そうにしてたからパソコンが入ってるようには見えなかったのに。

「まぁな」って小さい返事を聞いてからようやくリビングの中へと足を踏み入れる。



「……夏休みの仕事、終わったって言ってませんでした?」



キッチンに向かう前に、一度彼と向かい合う席に腰を下ろす。

「それは終わった」と答える彼の目元には、黒縁メガネ。……メガネ姿なんてはじめて見た。




「ほかにも色々あるんだよ」



「………」



ああ、そうか。

……この人はしれっとしているけど、王宮学園の生徒会長の立ち位置にいる人。わたしたちに回せる仕事の他にも、やらなきゃいけないことはあるんだろう。



「手伝えることなら手伝いますよ」



「いや、いい。

……それよりお前、どうして起きてきたんだ」



まだ3時過ぎだぞ、と口にするいつみ先輩。

わたしからすれば3時過ぎまで先輩が生徒会の仕事をしていることにため息をつきたいのだけれど、言っても寝てくれない気がする。



何か言おうとしたけれど結局うまい言葉を見つけることができないまま、

「水飲みにきたんです」と告げて、ようやくキッチンに足を踏み入れた。



< 299 / 655 >

この作品をシェア

pagetop