【完】こちら王宮学園ロイヤル部



どうして普段C棟にこもってるのに、こういう時に限って外にいるの……!?

しかも騒がれるのが嫌いなくせに、みんなが来るこの登校時間に……!



「……南々瀬ー。

もう逃げるのはむりだと思うよ?」



ほら、と言われてまわりを見れば。

「姫向こう行かなくていいのか?」的な視線を、まわりから向けられている。だめだ逃げられない。……っていうかほんとになんで外にいるの。



「……泣きたい」



騒がれてはいるけど、一定の距離を保ったように誰も近づかない。

その中心にいるいつみ先輩を見るだけで、大袈裟なくらいに心臓が跳ねる。あの夜の言葉を思い出す。



「……南々瀬」



近づけばわたしに気づいた先輩が、やけに通る声でわたしを呼ぶ。それで周囲のざわめきが落ち着いて、みんなが注目していることに気づいた。

だけど、呼ばれた時点で逃げ道なんてない。




「……、」



ぐっと何かを堪えて、足を踏み出す。

それから先輩の前まで歩み寄って、「おはようございます」を言えば。彼は「おはよう」と返して立ち上がり、軽くスラックスについた砂を払う。



「もどるぞ」



たった一言。

それだけ言った彼がスタスタと歩き始めてしまうから、慌てて追うようにして後に続くけれど。



「わ、わざわざ……

あの場所でわたしのこと待ってたんですか?」



「そうだ」



「なん、で……」



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