【完】こちら王宮学園ロイヤル部
ぴたり。彼が足を止めて振り返る。
唐突だったせいで変にバランスを崩しそうになったけれどなんとか持ちこたえて、黒い瞳を見上げれば。彼は「なんでって、」と口を開く。
「お前あれから俺のこと避けてるだろ」
「っ、」
「逃げられたら困るから待ち伏せした」
それだけだ、と。
言うが早いかC棟のセキュリティを解除した彼は、扉を後ろにいた莉央に任せてどんどん進んでしまう。……その背中が、遠い。
「……南々瀬ちゃん」
逃げられたら困るって。
そう言ってくれるのに。……向き合えない自分が、ひどく嫌になる。
「……あいつに、告白された?」
「……、はい」
あまりにも彼が早く行ってしまったから、6人だけでぞろぞろとリビングに向かう。
夕帆先輩に問われて、嘘をつくのも憚られて素直に頷けば。今日も美人すぎる彼は、困ったように青い目を細めた。
「……ちょっと、後悔してたみたいよ」
「え、」
後悔。その言葉にふくまれた意味を理解できないせいで、一瞬にして表情が凍ってしまう。
後悔って、なに。……なにを、後悔してるの?
「南々瀬ちゃんに、結構強引なことしたから。
引き入れたのは自分なのに、南々瀬ちゃんがここに来なくなるかもしれないって。……いつみの割には不安そうにしてた」