【完】こちら王宮学園ロイヤル部
後悔してたみたいよ、と。
伝えられるそれに、喉の奥が熱くなる。
……ちがうの。たしかにキスは強引だったけど。
逃げようと思えば、どうにでもできたの。本気で嫌がれば先輩はやめてくれたと思う。なのに拒まなかったのは、わたしの方なの。
「……わ、たし、」
好きなんですとは、言えない。
待ってる結末は別れだけだとわかっているから。……好きとは、言えない。
「先輩と……話してきます」
「あらそう? いってらっしゃい」
ひらひらと手を振って見送られ、足早にリビングに向かう。
でも先輩はいなくて、もしかして部屋に行ったのかもしれないとリビングそばの階段を駆け上がる。3階の、金の王冠のプレートがかかる扉。
寮は防音じゃないけど、ベル付き。
押せば軽い音が向こうで聞こえて、数秒で扉が開いた。
「あの、いつみせんぱ……っ」
ぐい、と。
腕を引き寄せられたかと思うと、視界の前であっという間に扉が閉まる。その向こうに見えた光景はわたしがいたはずの廊下で。
「……悪い」
いつみ先輩の部屋に、ふたりきり。
しかもなぜか背後から抱きしめられてる……と、自覚した途端に、全身が一気に体温を上げた。
「お前の前じゃ……どうも制御が利かない。
さっきのあれだって、お前は何も悪くないのに一方的に俺が嫉妬して冷たくした」
「え……?」