【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「正直、嬉しかったんだよ」
「………」
「俺はいつだって頼られる立場にいる。
なのにお前が頼れって言ってくれたのは、嬉しかった。……こんな些細なことでも好きにさせられる」
気づいたら、好きで……
好きになればなるほど、欲張りになる。
「……お前は強制的に入部させられて、不満かもしれねえけどな」
「そ、んな……っ。
わたし、確かに強制的に入部させられましたけど、最終的には自分から入りましたし。それに、」
それに。
まだ転校してきて2ヶ月なのに、すごくすごく充実した日々を送っていられるのは、先輩たちのおかげだ。──思い出作りには、もったいないほど。
「先輩」
「………」
「ありがとうございます。
……わたしを、引き入れてくださって」
女の子たちに今も妬むような視線を向けられることもある。だけどもうそれが気にならなくなったのは、みんなのおかげだった。
先輩が。……わたしに迷わず手を差し伸べてくれるから。
「……ああ」
そう先輩が小さく口にすると、部屋の中には沈黙が訪れる。
廊下の奥の部屋に時計があるのか、チクタクと時計が秒針を刻む音が薄っすらと聞こえてくるだけ。
しばらくして、彼は「始業式行かねえとな」と言って、ゆっくり身を離したけれど。
彼がわたしを抱きしめている間何を考えていたのかは、やっぱりわたしにはわからなかった。