【完】こちら王宮学園ロイヤル部







ドームに入った瞬間の熱気といえば、本当に相変わらずだった。

ひさしぶりの彼等の存在に色めき立つ声は絶えなくて、先生たちの話の途中も、こちら側に向けられた視線が無くなることはないため気が抜けず。



「それじゃあ、またあとで」



精神的疲労を味わったような気分になったあと。

本来ならC棟にもどるのだけれど、今日はB棟の前でお別れ。B棟は特進科と教養科の教室のある校舎で、わたし以外の全員がこの棟に通う。



校門を潜ったところで左から順にA棟B棟となっていて、E棟の右隣にドームがある。

わたしのクラスのある普通科はA棟で、すなわちドームから一番遠い。B棟の前でみんなと別れてA棟に向かうと、ひさしぶりの教室に足を踏み入れた。



王学では夏休み明けの始業式後に、文化祭のクラスごとの出し物を決める会議があるらしい。

そして普段授業に出ないロイヤル部のみんなは夏休み課題を出さなきゃいけないから、始業式後のホームルームだけは強制出席だ。



夏休みに、リビングにあった文化祭の資料を見せてもらったけど凄かった。

一般開放が行われる王学の文化祭。テレビ取材まで入るドームでは、芸能科の歌、ダンス等のステージパフォーマンスが行われる。



普通科は毎年、グラウンドに各クラステントを出して、屋台で食べ物の販売。

1学年5クラスもあるから、全部で15種類のラインナップだ。




特進科と教養科は、それぞれ教室で接待がメインの出し物。

例えばお化け屋敷にメイド喫茶、ホストクラブ、占い、コスプレでの写真撮影などなど。



スポーツ科は出し物を出さずに、主にトロフィーやメダルを展示したり、取材を受けるらしい。

スポーツの有名な大学からの来客が多いようで、そこからスカウトされる生徒もいるとかなんとか。



取材もたくさん来る分、とにかく規模は凄い。

そして夕帆先輩や莉央曰く、「生徒会は実行委員だから走り回らなきゃいけない地獄の日」だそうだ。



しかももう役割が決まっていて、いつみ先輩は来賓の方々の相手をしなきゃいけないみたいだし。

ルノは本部で放送担当。椛と莉央は校内見回りで、そのふたりじゃ解決できない問題が発生した場合は、本部待機の夕帆先輩が向かう。



そしてわたしとルアは受付。

何気にこれがいちばん大変らしいけど、受付は選出されている実行委員も手伝ってくれるようで。



「おつかれ」



席についたわたしの顔色を見てくすりと笑った大和も、その実行委員のひとりだ。



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