【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「……わかった。今は近づかねえよ」
「っ、」
「好きな男の名前は?
別に言いふらすわけじゃねえんだから、言い切った方が早いだろ」
逃げられない。逃げ場がない。
ドアに背を預けるようにしてもたれた先輩は余裕綽々で、ここで嘘の名前でも言ってしまえば逃がしてもらえるだろうかと、そんなことを考える。
「ああ、それか。
……俺を好きだって認めるのでもいいけどな」
もうわたしの感情なんてお見通しみたいに。
先輩が告げるから、逃げる術を必死で考える。
「言えよ、さっさと」
有無を言わせない絶対的な声。
それでも言えずにくちびるを固く結んで、なんだか泣きそうになりながら先輩を見据えていれば。
「タイムオーバーな」
「え、っ」
「言っただろ、"今は"近づかないって」
そ、そんなこと言われても……っ!
っていうか本当にもう逃げ場がない……!!
ひたすらにあたふたするわたしと、余裕げに歩み寄ってくる彼。
思わず後ずさるけれど後ろは壁。ベッドに乗って向こう側に逃げればなんとかいけるかなと、そんなことを頭の中で計算して。
片脚を、ベッドにかけようとしたとき。