【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「ひゃ、っ……」
腕をつかまれて、バランスを崩す。
ばっと振り返れば呆れたようにため息をついた先輩が、わたしの返したカーディガンをベッドに放って空いた手で器用に膝を掬った。
「っ……」
そのせいで、お姫様抱っこされるような形になって。
冷めない熱がくすぶる。心臓が痛い。
「……悪いけど、今日は逃してやらねえ。
強引に泣かせてでも吐かせるからな」
ベッドに沈む身体。
熱い肌とは対照的な、冷たいシーツ。
押し倒されていることに気づいた時には、じわりと瞳に涙がにじむ。
わかってたことだ。どれだけ逃げたって彼を好きである以上、隠した奥にある本心は彼に反応してしまう。逃げる気なんて、本心にはたぶん無い。
ギシ、と妖しい音を立てて軋むベッド。
見上げた視線の先には、いつみ先輩。
「いつみ、せんぱ、っ……」
近さに戸惑う間も無く、くちびるが触れた。
先輩の匂いが近すぎて、わけのわからない何かに足元をすくわれる。
彼のカーディガンはつい先ほど返したはずなのに、数時間で自分自身に染み付いた彼の匂いに、思考が熱でおかしくなる。
「安心しろよ。何にも邪魔されねえ。
……だから素直に、俺の質問に答えればいい」
「っ、」
そしたら離れてやるよ、と。
悪魔のような囁きに、惑わされる。