【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「怯えるなよ」
余裕げな表情の中で。
その瞳だけが不安に揺れたように見えたのは、わたしの瞳が不安定に揺らめいているからだ。
「俺が絶対にどうにかしてやる。
だから全部、正直に話してくれないか?」
さっきまでは命令口調だったくせに。
こんな風に答えを求められたら、いくら嫌でも言わなきゃいけないと思ってしまう。
「わ、たし……」
閉ざした感情が、開く。
知られたくないくせに知って欲しくて。結局は曖昧に隠すことしかできずに惑わせた感情。
耳鳴りのようにガンガンと響いていたはずの鼓動は不思議と落ち着いていた。
さっきまでの上がり切った熱が嘘みたいに、感情の波は穏やかだった。
「好き、です……」
「………」
「好きじゃ、なかったら……
何度もキスなんか受け入れられません」
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
それを拭う指先はやっぱりひどく優しくて、胸を締め付ける感情は愛おしさ以外の何物でもなかった。
「……泣くなら、はじめから嘘つくなよ」
ふっと落とされるのは、吐息のような優しい笑み。
それから重なったくちびるを、拒むこともせずに受け入れて。何度も落とされるキスで、重なった気持ちをわたしに思い知らせるように。
深くなるキスの途中、ぽろっと涙が落ちる。
言葉なんていらないくらいに、深く求められて。ようやく離れたと同時にまぶたを持ち上げれば、慈しむような視線を向けられた。