不埒な専務はおねだーりん
ケーキに合うように少し濃いめに淹れたコーヒーを執務室に持っていくと、篤典さんはケーキに手をつけずに待っていた。
「かずさの淹れてくれたコーヒーが飲めるなんて嬉しいな」
「……大袈裟ですよ」
所詮素人の付け焼き刃、プロの淹れたコーヒーには遠く及ばない。
それでも篤典さんが嬉しいと言ってくれるのなら、いつでもコーヒーくらい淹れてあげるのに。
(あ、もう出来てる……)
砂糖とミルクをデスクに置きながら、今朝持ってきた書類の進捗を横目で確認すると、既に目を通し終えたのか、承認印が押されていた。
「か・ず・さ」
篤典さんはカップを唇に当てながらウインクした。
「はい……」
持っていく前におねだりを聞けってことね。はいはい、分かってます。
「なんですか、専務」
「……ケーキが食べたいんだ。そのフォークで食べさせてくれる?本当は”私ごと食べてあ・な・た”って添えてもらえると嬉しいんだけどね?」
クネッとしなを作ったうすら寒いポーズが決まると、兄譲りの冷たいブリザードをお見舞いした。