不埒な専務はおねだーりん
ごくんと飲み込んだケーキが何味だったのか、今となってはわからない。
(あ、味なんてわかんないよ……!!)
小鳥にエサを与えるのとはわけが違う。
……私には感情がある。
篤典さんの体温を間近に感じるこの態勢で、ジイっと見つめながらケーキを食べさせられてはとても平静ではいられない。
「クリームついてるよ、かずさ」
篤典さんの指が唇の端につかなかったついたクリームを拭う。
とっくの昔に忘れていた感情が膨らみかけた時、何かがバサッと床に散らばるような音がして、我に返った。
「か、かか、かずさちゃん!?」
執務室の扉がいつのまにか開いており、書類を取り落とした浜井さんが呆然と立ち尽くしている。
私は、ようやく自分の状況を理解した。
あろうことか篤典さんの膝の上に乗っかって、手ずからケーキを食べさせてもらっているなんて、はたから見たらただならぬ関係にしか思えない。
「お、おおおお、お邪魔しました!!」
「ま、待ってください!!」
浜井さんは私が止めるのも聞かず、顔を真っ赤にして早足で秘書室に戻っていった。
(ご、誤解されちゃった!?)