不埒な専務はおねだーりん
(篤典さんに謝らなきゃ……)
そう思っているのに、執務室の扉は今日も固く閉ざされていた。
「今日も“誰も入れるな”ですって」
御用聞きに伺った浜井さんが手ぶらで自分のデスクに戻る。
こうして、彼の立場と自分の立場の違いを目の当たりにすると、篤典さんが私達に積極的に歩み寄ってくれていたことをひときわ強く感じる。
おねだりをきかなくとも淡々と業務をこなしているのが逆に怖くなる。
こうなることを望んでいたというのに、実際にそういう事態に直面するとおねだりに四苦八苦していた日々が途端に懐かしくなる。
「何かあったの?」
「機嫌を損ねちゃったみたいで……」
「ごめんね、私が告げ口みたいな真似したせいよね……。まさか遼平先輩もふたりが“そういう仲”だってことを知らないとは思わなくって……」
……“そういう仲”とはどういうことか。
変なところを見られてしまったせいで勘違いに拍車をかけてしまったようだったが、ここら辺できちんと誤解を解いておく必要がある。
「あの……私と専務は浜井さんの思っているような関係ではなくってですね……」
「え?違うの?」
浜井さんは急に真顔になり、信じられないと言いたげにキョトンとしていた。