わたし、結婚するんですか?
 




「一応、ご希望を取り入れて、こんな感じにしてみたんですけど、どうですか?」
とにこやかに設計士が広いガラスのテーブルの上に図面を広げてみせる。

 おお、大きな家だ、と思いながら、
「すごい。
 なんか理想通りのおうちですねー」
と言うと、

「ほとんど奥様のご希望通りですからね」
と設計士が笑う。

「奥様って誰ですか?」
とうっかり言って、遥久に、

「お前だろ。
 盛田(もりた)さんの奥さんの意見を取り入れてどうする」
と呆れたように言われてしまった。

 盛田というのがこの設計士の名前のようだった。

 初対面ではないようなので、もちろん、名刺交換も挨拶もないから知らなかったが。

「俺はそんなに意見はなかったからな。
 ほとんどお前の希望通りだ。

 俺が望んだのは、このウッドデッキくらいかな」
と広く庭に張り出したウッドデッキを指差す。

「この前に大きな木を植えて、木陰で本を読みたいんだ」
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