わたし、結婚するんですか?
 さっさと着替えた方がいいのでは、と思ったのだが、物音から察するに、遥久は明かりのついている風呂の方を確認したあとで、こちらに向かっているようだった。

 ……いや、開けるなよ、風呂、と頭の片隅で冷静に思いながらも、脳の大部分はパニックだった。

 下着はまだベッドの上。

 手を伸ばしてつかんで、さっと着替えるっ!

 いや、慌てふためいて、足を半分突っ込んだところで、こけそうだ。

 はきかけのまま、ベッドにうつ伏せに倒れたところで発見されるとか。

 そのまま死体になりたいくらい恥ずかしい。

 どうしたらっ!? と思ったとき、開いたままの押し入れの中、箪笥と壁の隙間が空いていることに気がついた。

 いつもは掃除機が入っているスペースなのだが、ものぐさなので、掃除機はしまわずに、リビングの隅に立てかけていることも多い。

 そして、今がまさにそうだった。

 ラッキー!

 後から考えれば、なにもラッキーではなかったのだが、此処で冷静になる余裕はなかった。
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