わたし、結婚するんですか?
 いやいやいやいやっ。
 それ、脱ぎ捨てて出て行ったやつじゃなくてっ。

 これから着るやつなんですよーっ、と声も出さずに絶叫しながら、自分は今、世界で一番間抜けな人間かもしれないと思う。

「まさか、葉山と……」

 何故、葉山。

 帰りましたよね、葉山。

 いや、帰ったのを見てはいないが。

 まさか、葉山も箪笥の反対側に隠れてるんじゃないだろうな、と思いながら、固まってると、遥久は、

「二人で何処か隠れているのか。
 出て来いっ。

 洸っ。
 葉山っ」
と叫び出した。

 ……今、出て行ったら、確実に殺られる。

 言い訳する暇もなさそうだ、と思いながら、息さえ出来ずに、冷えた身体でピクリとも動かずに止まっていると、
「うん?」
と声がした。

 何故か、葉山と居ると決めつけた遥久は、ベッドのあるこの部屋が怪しいと思ったようで――

 いや、まあ、本当に居るのだが。

 此処を重点的に探しているようだった。
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