わたし、結婚するんですか?
 それでも、遥久は、
「お前、逃げ足は速いな」
と言ってきたので、遥久としては、もっと早くに捕まえられると思っていたらしい。

「は、離してくださいっ。
 裏切り者っ」
と叫んだ洸に、遥久が固まる。

 遥久の目は、洸の手にあるメモを見ていた。

「……新村か。
 何故、お前がまたその番号を」
と呟いたあとで、

「新村がお前になにか余計なことを言ったのか?

 待ってろ。
 ちょっと殺してくるから」
とまるで、くまのお父さんが、子どもに、今から美味しいものとってくるから待ってなさい、というように言って、本当に行こうとする。

 いやいやいや、美味しいものって、人間ですよねっ? と洸は架空のくまの父親に向かって叫びながら、遥久の腕にぶら下がるようにしてしゃがみ込み、止めようとする。

 やる!

 この人は常に本気だっ。

 今すぐやるに違いないっ。

 この間見たサスベンスの間抜けな犯人のように、証拠など残さずにっ。
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