わたし、結婚するんですか?
 




 社長室のソファで遥久は沈黙していた。

 なにを言うのかと怖くて、ちょっと距離を空けて座ってしまう。

「一体、なにがあったんだ」
と前に座る章浩が訊いてくる。

 洸は遥久の言葉を待ったが、遥久は洸の言葉を待っているようだった。

「……どっちかしゃべれ」
と章浩は言ったが、遥久はしゃべるつもりはないようだった。

 章浩は溜息をつき、
「洸、話せ」
と言ってきた。

 洸は膝の上で組んでいた手に力を込めて、言いたくもないその言葉を口にした。

「思い出したんです。
 私、裏切られてたんです。

 記憶をなくす前、私、見てしまったんです。
 課長が女の人とキスしてるのを。

 それで、問い詰めたら、関係ないって言って。

 いやいやいや。
 おかしいじゃないですか。

 だって、この目で確かに見たんですよ。

 で、更に問い詰めたら、
『本当に関係ない。
 どうしても気になるのなら、この番号にかけて、その女に訊いてみろ』って。

 ……イベント会社の女の人でした」
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