わたし、結婚するんですか?
 洸は遥久がくれた番号を勇気が出たら、いつでもかけられるよう、スケジュール帳に書きとめていた。

 自分のスマホからかけるのは抵抗があったので、人気のない場所で公衆電話からかけようとしたのだが。

 夜の公衆電話には明かりに吸い寄せられた虫たちがブンブン飛んでいるし。

 光に吸い寄せられたヤンキーくんたちも近くにしゃがんでいるしで、かけそびれ。

 途中で、もう嫌になって、スケジュール帳を裂いて捨ててみたりしているうちに、三階から落下して、すべてを忘れてしまったのだ。

 イベント会社? と言った章浩が洸に問う。

「その女、うちとも仕事してるのか」

「はい」
と洸が言うと、章浩は微笑み、

「名前を教えろ。
 今すぐ辞めさせるよう、圧力をかけてくる」
と言って、立ち上がろうとした。

 いやいやいや。
 それじゃ、ちょっと殺してくると言った課長と変わりないですよーっ、と洸は慌てて、章浩の腕をつかむ。

 すると、まったくこちらを見ないフリをしていた遥久が素早く、その手をはたき落とした。
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