わたし、結婚するんですか?
 そして、また、何事もなかったかのように、他所を向いてしまう。

「いや……他の人と浮気した分際で、嫉妬とかしないでください」

 洸は冷たく遥久を見下ろした。

「してないと言ってるだろ」
と言った遥久は、章浩に向かって、

「本当に関係ないんですよ」
とようやく語り出した。

 社内だからか、今の立場をおもんばかってか。

 誰も居ないのに、章浩に対して敬語だった。

「……確かに俺には、洸に言えないことがあります」

 そんな告白を始めた遥久に、洸は、

 それは聞いてないーっ!
と心の中で絶叫する。

 だが、それは記憶をなくす前にも知らなかったことだと言おうものなら、また、章浩がなにを言い出すかわからないので、グッとこらえた。

「洸に対して、秘密はありますが。

 俺が、今、誰よりも洸を愛しているのには変わりない。

 そのことだけが俺の真実です」
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