わたし、結婚するんですか?
 



 遥久は出て行ってしまう洸を呆然と見送っていた。

 いつかこうなると思っていたが、そのときが来ると、なんだからしくもなく、ショックで動けない。

「先輩……」
と呼びかけてきた盛田に、

「だから、お前、洸の箱入り具合を甘く見るなと言っただろ」
と言いかけ、

「いや、協力してくれたのにすまん」
と謝る。

「まあ、いつか、こうなるとわかってたんだ」
と遥久はソファに腰を落とした。

「洸は誰よりもピュアな女だからな」
と目を閉じ、呟くと、盛田が、

「……あのー、気のせいですか?
 ちょっと、ノロケが入ってきたような」
と言ってくる。

「ああ、洸。
 追いかけねば。

 逃げられそうだが……」

 遥久は落ち着かなく、ソワソワとガラス張りの事務所の壁から洸の出て行った外を見る。

「こうしている間にも、俺に愛想尽かした洸が、他の男に見初められて、結婚の約束をしているかもしれん」
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