わたし、結婚するんですか?
 そうだ。
 私、入社したときからずっと課長が気になってたんだ。

 ちょっと怖いけど、クールで素敵な人が居るなと思って……。

「洸。
 お前、途中から考えてることが口に出ているが自覚はあるか?」
とそこで、遥久が訊いてきた。

「はい、結構です。
 もう煮るなり焼くなり」

 好きにしてください、と感情もなく呟く。

 すると、遥久が、
「いや、俺も人事の手伝いで、お前の履歴書を見たときから、気になってはいた」
と言い出した。

 えっ、と洸が顔を上げると、
「社会人とも思えない汚い字だな、と思ったんだ。
 綺麗な顔をしていて、学歴もまあまあなのに」
と容赦ないことを言ってくる。

 いや、あれ……私の精一杯の綺麗な字だったんですが……。

「あの呑み会の日、駅までの帰り道。
 お前と二人だけになった。

 キスしてみろと言ったのは、職場で緊張して俺を見ているときと違って。

 ずっと笑ってるお前が猫の子みたいで可愛いなと思ったからだ」
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