わたし、結婚するんですか?
 お、奥ゆかしいくらいがいいかもしれない、と洸は目をそらした。

 真正面からそんなことを言われると、恥ずかしいし、信じられない。

 私はそんな課長に大事にしてもらえるような立派な人間じゃないですよ、と思って。

 だから、ずっと不信感があったんだなと思う。

 課長がどうとかじゃなくて、私が課長に相応しくない気がするのに、そんな風に褒めちぎってもらって。

 そう思っている間も、遥久は自分を見つめ、愛を囁いてくる。

「課長、離してください」
と洸は身をよじり、言っていた。

「もう近寄らないでください」

「何故だ、洸っ。
 誤解は解けんだだろうがっ」

 いや、なにひとつ、誤解ではなく、事実でしたが……と思いながらも、

「そうじゃなくて、こんなずっとベタベタしてると、飽きられる気がするからですっ」
と洸は訴える。

「なにを言う。
 俺がお前に飽きるなんて――」
と言いかけた遥久は、

「いや……お前が俺に飽きるということもあるな」
と真剣に悩み出す。
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